風力発電のメリットとデメリット。電力会社OB目線で書きます。

風力発電 再エネ

「風が吹くと桶屋が儲かる」。
意外な人が、めぐりめぐって意外なところで儲かるという諺です。
風力発電はどうでしょうか。
第6次エネルギー基本計画では、2030年断面で「再生可能エネルギー」を36〜38%、うち10%程度を風力で賄う計画となっているはずです。
でも再エネといえば太陽光ばかりがピックアップされ、風力に関するニュースは目にしないですよね。

現役の電力会社社員時代から、風力発電など話題にもでませんし、正直、海外でやるもので、狭い国土の日本では無理、としか考えておりませんでした。
皆様はどうでしょう。
風力発電にはどんなイメージをお持ちでしょうか。

人工都市ラスベガスを有するネバダの砂漠。
抜けるのに車で1週間もかかるような広大な砂漠に、何万基とも何十万基とも言われる風車が立ち並ぶ、信じられないような風景。
吹き抜ける風は尽きることはありません。
こういう景色を目にすると風力のパワーは無尽蔵で、文字通り「自然エネルギー」をイメージできます。
これなら国家を支える「エネルギー源」としてのメリットありという気持ちになります。

ミッション・インポッシブル3で、イーサン・ハントが教え子のリンジーを助けるシーンが印象的です。
ヘリコプターでの戦闘シーンの舞台は風力発電所群。
敵のヘリコプターが風力発電のブレードに接触し、次々と墜落します。
集中して見入ってしまいましたが、見終わったあとには、風力発電にも危険な側面があると感じました。
バード・ストライクや、あんな高速で回転するブレード吹っ飛んだらどうなるのだろうとか、余分なことまでイメージしてしまいました。

40年間電力会社に勤務しましたが、風力発電に関して話題に出たことすらないと申し上げました。
しかし東日本大震災以降、状況は激変しております。
政府は「再生可能エネルギー」に前のめりですが、電力会社各社はどういう気持ちで取り組んでいるのでしょうか。
なんとなくわかる気がしますので、彼らの目線でお話したいと思います。

風力発電の種類、メリット・デメリットはさまざまなサイトで特集されていますので、サクッと触れさせていただき、その後本音ベースでお話いたします。

太陽光発電のように、投資を除いて最終的に個人に落とし込めるような技術・事業ではありませんので、就活ネタとして参考にお読みいただけると幸いです。

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風力発電の種類。

  • 陸上風力発電所
  • 洋上風力発電所
  • 浮体式洋上風力発電所

の3種類あります。

陸上風力発電は、一定以上の風が安定して吹く、広い土地が必要です。
日本では北海道、東北、九州に大規模なウインドファームが建設されています。
洋上風力発電は海洋上に設置するものです。
遠浅が多く、フィヨルドなどで風が強いヨーロッパでは盛んなようです。
海上なので安定した風力を得ることができるとのこと。
騒音やブレードの破断事故なども気にしなくて良いとのことです。
浮体式洋上風力発電は浮体物を基礎に洋上風力発電を設置するものです。
海が深い日本ではこちらの方が有望とされているようです。

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風力発電のメリット。

  • 環境負荷が少ない
  • 変換効率が高い
  • 風が吹けば夜間でも発電できる

環境負荷は理解できますが、別の環境問題があるようです。
後ほどコメントします。
夜間も発電できる、というのは太陽光との比較でのメリットで、論理のすり替えのような気がします。
太陽光発電以外はどんな発電所でも夜間に発電できます。

風力発電のデメリット。

  • 発電量が風速に左右される
  • 騒音が発生する
  • 設置のための場所が限られる

と記載されておりましたが、以下はどうなのでしょうか。

  • 陸上風力の発電コストは、kW あたり22円ということでしたが、洋上風力と浮体式はどうなのでしょうか。
    設備投資から考えて、大手電力会社やそれに匹敵する資本がいると思います。
    実態として何が出てくるかわからず、算定しようがないのではと思えます。
  • 送電システムの構築、漁業者などの海洋権益者への補償、景観や環境のアセスメント費用、保険。
    一体誰がやるのでしょう。
  • しれっと陸上風力の設置場所が限られるという項目がありますが、大問題です。
    すでに、地域関係者から次々否定されています。
  • これら手間と費用と得られるベネフィット(kWh)を比較すると、他の電源に投下した方が得策なのでは。

電力会社OB目線。

さまざまなデメリットや問題点を列挙いたしました。
政府がエネルギー基本計画を打ち出し「再生可能エネルギーを経済成長のエンジンに」とまで前のめりになっておられる以上、電力会社が後ろ向きでおられるはずがありません。
各社名称は違うと思いますが、社内に「再生可能エネルギー関連本部」を立ち上げ、役員クラスが本部長に就いておられます。

余談ですが、方や電力需給逼迫への対応のため、化石燃料の調達にも必死になっていることでしょう。
世界が抱える矛盾のミニチュア版が電力会社です。
しかも最高責任者は一人です。
この辺りの気分、一度聞いてみたいですね。

話を戻します。
ゆえに電力会社も風力開発は真剣に考えていると思います。
ただ、関西電力が宮城県の蔵王で計画したウインドファームは見事に頓挫いたしました。
※電力会社を変える4つの環境変化

また、最近のニュースですが、再生可能エネルギー事業者の「グリーンパワーインベストメント」の風力発電の建設計画が、地元岩手県の絶滅危惧種「イヌワシ」の保護団体の反対により待ったがかかったとのことです。
※参照:風力発電計画に県が『待った』 全面的な再検討求める<岩手県>

いろいろ書きましたが、日本の一番の問題点はここだと思っています。
おそらく「関西電力」も「グリーンパワーインベストメント」も国が一押しする「再生可能エネルギー」の立地に、まさか交渉障害が現れるとは思っても見なかったということではないでしょうか。
環境負荷という言葉は、もっと広義に捉えないと何も進まないようです。

パブリック・ベネフィットのためには何もかも犠牲にすべきとは言いませんが、「再生可能エネルギー」の推進にはみんな同意していたのではないのですか。
地元知事の名前で拒否されているという報道を見ると、昔と何も変わっていないように思えます。
他人の庭でできた野菜は美味しくいただきますが、自分の庭には絶対に畑は作らせないということです。
であればもっとスケールメリットのある、原子力に絞って労力を集中した方が効率的でいいのでは。

政府や役所には弱い、電力会社の声なき声です。

再エネ
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。