電力会社就活生必読!あなたの業界や従業員イメージは間違いです。

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電力会社就活生の業界や従業員イメージ

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢(ペンネーム)です。
電力会社で40年間お世話になり、今は引退しています。
突然ブログを始めたいという衝動に駆られました。

10年前の福島第一原子力発電所事故に始まり「原子力の再稼働」「脱炭素」「夏冬の電力需給ひっ迫」「ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源戦略」、電力会社はいろいろと話題になりますが、あまり薔薇色の話は見当たりません。

ただ、驚くことに、コロナ禍の中、就活生に電力会社が人気ということです。
さまざまな新聞記事やS N Sで拝見いたしました。
企業や飲食店がバタバタと倒れていくのを見て、やはり安定企業への就職を望む方が多くなってきたということらしいです。

就活サイトや、個人のブログなどをいろいろ見せていただくと、就活生の電力会社に対するイメージは、集約すると以下のような感じです。

1.安定していて潰れない
2.ホワイト企業
3.平均を超える年収
4.年功序列で終身雇用
5.自分のやりたい仕事ができる
6.これから伸びそうな会社
7.供給エリアが狭いので転勤が少ない

なるほどという感想です。
まるで40年前に私の母が呟いていたようなイメージです。

しかし、かたやブログ投稿やYouTubeなどを見せていただくと、めでたく入社はかなったものの、実はもう辞めたい・転職したいという方が大変多いような気がしました。
中には辞めてせいせいしたという方もおられます。
一般には、そんな人も羨むような会社に入社できたのに、と思いますよね。

このギャップはいったいなぜなのでしょうか。

是非お伝えしたいと思います。
加えて電力会社に入社したいとお考えなら、どういうところに注目したら良いのか、どういう心構えを持つべきなのか(上からですいません)、採用担当者はどういう観点で学生を選ぶのか、就活生の気になるところを解き明かしたいと思っています。

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電力会社のイメージと実際とのギャップ

就活生(ひょっとするとご家族の方のイメージかもしれません)の電力会社に対するイメージと実際とのギャップを、40年間にわたり在籍した私の経験と時代の変貌を加味しながらお伝えしたいと思います。

この記事をお読みいただくと、退職・転職やそれもできずに我慢しながら漫然と
社会人人生を送り続けるという悲劇は回避できるのではと考えております。

一つ一つ私の経験から解き明かします。

安定していて潰れない

電力会社のイメージとしてはこれが最も多いでしょう。

前にも書きましたが、コロナ禍の影響をもろに受けた企業や飲食店が軒並み危機的な状況に陥る中、就活生の安定志向の中で電力会社の人気がうなぎ上りという記事を目にしました。

この「安定企業感」というのは、単なる自分のイメージ、親や友達が安定していると言うからとか、いろいろ情報源はあろうと思いますが、よく研究された結果ではないような気がします。

「安定」の定義にもよりますが「電力会社」を「電力供給事業」と読み替えれば、安定してもらわないと生活も産業も成り立たないことになります。

ただ、現体制での電力会社が「安定している」「潰れない」というイメージは違います。
冒頭にも列挙しましたが、今後の原子力の扱い、再生可能エネルギーの動向、国際情勢、電力自由化に伴う新規参入企業の頑張りなどで、現在の大手電力会社の体制、規模感がどうなるかは全く不透明です。

大手電力会社が単なるPPS(特定規模電気事業者)になっても潰れていないと言えるのでしょうか。
私個人的には、更なる「電力システム改革」が必然で、そのことが現大手電力会社の生き残る唯一の方法だと考えております。

戦後すぐに編成された、現在の電力会社の形態が、これからも「安定していて変化することがない」というイメージはであるならば、少し甘すぎるような気がします。
今の不透明感をどう切り開いていけるかを考える人が求められているのではないでしょうか。

ホワイト企業

ホワイト企業とはどういうことでしょう。
ブラック企業の反対語と解釈します。

ノルマとかパワハラがない。
サービス残業がなく、休暇が問題なく取得でき、福利厚生もしっかりしている。
要は、労働基準法など労働関係法上、問題がないという意味ですね。

そういう意味ではこのイメージは正しいです。
ただし「仕事が楽そう」という意見もありましたが、そこはどうかと思います。

半分当たっているというか、配属箇所によって大きく異なります。
発電所・営業所などの現場の仕事ではルーチンの職種が多く、日々の業務をこなせば一日が終わり、17時半になれば「はいお疲れ」ということが多いでしょう。

反対に本社配属になると、経営に近いわけですから上層部からの飛び込みの仕事、良く考えないと前に進まない仕事、一人で徹夜してでも悩み続けないと解決できないような業務もあります。

忙しい=楽ではないと考えると、本社は決して楽な仕事ではありません。
私も現役時代、月に200時間の残業を強いられたこともあります。

パワハラかどうかは主観の問題もありますが、上司から厳しく叱責されるのも本社では日常茶飯です。
現場勤務者とは違い、相当のプレッシャーです。
確か、本社だけが何回か労働基準監督署の指導が入っていた記憶があります。

電力会社には学歴によるヒエラルキーが確実に存在します。

①頂上層 東大・京大+地域のトップ国立大学卒
②中間層 その他の国立大学+私立大学
③一般層 工業専門学校+高校卒

この三角形は厳然とあり、③の方はほぼ現場への配属となります。
「仕事が楽そう」と映るのはこの層の社員が最も多いからかもしれません。

福利厚生の充実も今は昔の話です。

確かに、社内預金の高利回り、社宅の家賃補填、観光地での福利厚生施設の格安利用等が古くにはありました。
でも残念なことに、自由化での他社との競争や原子力停止による収支悪化などの影響ですべて廃止されています。

しかし福利厚生のない会社ということではなく、普通の会社並みになったと理解いただけると良いと思います。

平均を超える年収

平均年収は、大企業の中ではそんなに良くないが、中小の平均よりは上という感じだったと思います。
初任給、平均年収などはどんなサイトでも出ていますので、そちらをチェック願います。
ここでは私が体験してきた感覚的なお話をさせていただきます。

入社して若い時は、社宅の家賃補填やなんやらの福利厚生でギリギリの生活。
毎週土日には食費を浮かすために、私と妻の実家に交代交代に帰っていました。
子供が生まれてからは、それが両親の楽しみになったようで、少しは恩返しができたような気がしました。

必然的に残業代が頼りみたいな生活でした。

余談はさておき、収入の増え方は右肩上がりだったような記憶があります。
上に厚く下に薄いという感じです。

特に何年か経過すると、非組合員である特別管理職に上がる機会がありそこを超えると経営側になりますので残業手当はなくなりますが、給与体系がそれまでとは大きく変わり、急に生活が楽になったような気がします。

問題は、この「特別管理職」になれるかどうかです。
ヒエラルキーで説明しました「頂上層」は必ず、「中間層」はほぼ、「一般層」はたまに、という感じです。
「中間層」の下に太線があるように思えます。

年収の面でも大きく差がでますので、言いにくい話ですが、ご自身がどの層に属するのかも入社希望するかどうかの判断軸になるかと思います。

また、東京電力福島第一原子力発電所事故で原子力が全停止した際、電力料金の値上げが避けられないものとなりました。

料金値上げは経済産業省から厳しく査定されるものですが、これまで従業員の給与まで云々されるという記憶はありませんでした。
ところが今回は、給与のカットだけでなく、ボーナスなしという事態となり、従業員の年収は2割程度ダウンしたという会社も存在します。

それだけ、電力会社の優遇に関しては社会的にも厳しくチェックされるような状況になっているということでしょう。
「平均を超える年収」というイメージは内部制度の問題だけでなく「社会の目」でも監視されはじめているということです。

年功序列で終身雇用

年功序列は完全に崩れつつあります。

以前は官僚同様、年次逆転は絶対にありませんでしたが、今では頻繁に起こっています。中には上司部下で同期とか、年次逆転をいうことも日常茶飯事です。

今後、業界の方向性次第で、また電力システム改革が現実化すれば、先輩だから後輩だからというような考え方は通用しなくなることは間違いありません。

終身雇用はほぼイメージ通りだと思います。
定年延長につきましても、給与は減額しますが法定の年齢までは勤務することができます。
ただ、みなさんのイメージで、少し欠落している部分があります。

定年まで電力会社の仕事を続けられるのかどうかです。

ご承知の通り、2000年の大口電力自由化の際、他業種の業界参入が可能になる代わりに電力会社も他業種に参入できることとなりました。
電力会社がガス事業に参入したことはコマーシャルなどでご存じだと思います。

実はそれだけではなく、どの電力会社も20年間の間に100社近い関係会社を立ち上げています。

電力会社にはもともと保有する優位な企業シーズがいくつかあります。
火力発電のために調達ルートを持つLNG、その余剰分を活用するガス事業、保有していた光ファイバー網を活用しての通信事業、保有土地を活用する不動産事業などです。

電力会社に入社されるつもりが、適正によってはグループ事業に出向ということも普通にありますので、認識を持っておかれる方が良いと思います。

知り合いの中には、ある日突如「不動産鑑定士」の資格を取れと言われ、そのまま不動産の関係会社に行ったきりとか、技術系の中には、電力技術に触れることもなく最初から通信会社に出向し、給料だけを電力会社からもらっているという社員もいました。

覚悟が必要ですが、どこに自分の幸せがあるのかもわかりません。
全然門外漢の仕事を「こっちの方が楽しい」とかいって、気楽に生きている人も多いです。

自分のやりたい仕事ができる

これは技術系と事務系に分けて考える必要があります。

技術系は学生時代の専攻に専門性があるため、入社後も関連する部局に配属される確率が高いといえます。
それでも、適正によっては、技術系の事務系転用や部門間異動などで、全く門外漢の仕事をやらされるケースもあります。
加えて、今後原子力や化石燃料由来の火力発電所の動向によっては、当該専門家は不要となる可能性もあります。
技術温存という観点からも大問題と考えています。

事務系に関しては、何をやらされるか全くわかりません。
年に1度くらい希望を聞いてくることはありますが、希望通りになったという話は聞いたことありません。
「事務系はゼネラリスト」です。
人事当局の思いのままか年次送りです。
唯一違うのは、専門性の高い、経理の一部くらいでしょう。

これから伸びそうな会社

電気は生活や産業がどのように変化しようが、必ず必要なもの。
すたれるはずがない、ということでしょうか。

人間髪の毛は必ず伸びる。
だから散髪屋さんは絶対にすたれないと仰っているように思えます。

電力会社の今の体制は、70年前に出来上がったシステムで、これからも伸びていくとお考えなら、100%間違いです。

これまで書いてきたような、電力会社を取り巻く様々な周辺環境を全て認識した上で、「伸びそうな会社」と思われるのであれば素晴らしいことで、面接の際に面接官の前で具体的に開陳されるべきです。

まさに電力会社が求めるべき人材ではないでしょうか。

供給エリアが狭いので転勤が少ない

これは完全に間違いです。

まず、供給エリアと転勤の多少に何の関係があるのでしょうか。

供給エリアが狭いとしても自宅通勤できる場所は僅かです。
人事異動は2~3年ごとに行われ、通勤可能かどうかは全く考慮されません。
また、地方の電力会社であっても、各種関連の会社やグループ会社、団体などは東京に本社機能を置いているところがほとんどです。

自由化の際の新規事業展開で、海外に合弁会社を設立しているケースもあります。

また自由化の際、他電力との関係も様変わりしており、それまでの蜜月から競合相手となっているケースも多々あります。

そういう意味で、日本全国供給エリアとなると考えた方が妥当であると思えます。

加えて、将来の電力会社の有り様によっては、なにが起きるかわかりません。

転勤がご出身地域から遠くになることは少なそう、と思われているのなら、電力会社への就職は避けられた方が良いかと思います。

まとめ

ここまで述べてきましたように大手電力会社を取り巻く環境は様変わりしています。

「電力会社は安定していて潰れることはない」という、就活生諸氏のイメージは脆くも崩れ去っていることはご理解いただけたものと思います。

・でもやっぱり電力会社に入社したい。
・安定志向がダメなことはわかったけど、どんな人が電力会社に向いているの。
・いま何をすればいいの。

今後、この「電力会社雑記。就活生の電力塾です」ではこういう方々のための情報をさまざまなカテゴリーに分けて提供して行きたいと思っています。

企業体質・イメージ
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。