「電力会社の憂鬱」第一章~第四章:電力会社の企業体質の実態。

電力会社の憂鬱 小説

ネットで「電力会社のイメージ」を調べると、安定・ホワイトカラー・高所得・まったり、
というようなコメントが目につきました。もっと詳しく記載されているブログもあります。
安定している
①潰れない ②平均を超える年収 ③年功序列 ④世間体が良い
ホワイト企業
①残業代はきっちり ②休暇が取りやすい ③ボーナスも間違いなし 
 ④交通費もきっちり ⑤フレックス勤務が導入 ⑥狭い供給エリア

①待ち時間が長い ②いらない会議 ③移動が多い ④頭を使わない ⑤客は遠い存在
 ⑥休日出勤が楽 ⑦冬がヒマ
なるほど、安定感を求める方にとっては理想的な会社ですね。
ただ、この方は「電力会社を辞めたいが、ここだけは認める」というスタンスで記載して
おられます。しかも、どちらかといえば現場寄りの職場におられる方のようです。
経営の中枢にいる人たちとは少し違った環境のように思えます。
エリートと呼ばれる彼らは、自身の地位と権限を利用し、電力会社という狭い世界の中で、
ドロドロの出世競争
を繰り広げているというのが実態です。

その雰囲気や非常識さが異常な企業体質を作り出しています。
ほわッとした雰囲気が企業の体質であれば、微笑ましいのですが、実際に企業体質を形作る
のはそうではありません。

なかなか見えにくい電力会社の企業体質を小説「電力会社の憂鬱」にいたしました。
構成は4部作で、合計10万字の作品です。

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主な登場人物

西日本電力
日本海発電所次長    海野 雅治
社長          小村純一郎
経理担当副社長     南川 健一
原子力担当副社長    豊田 隆一
原子力管理部課長    白井  航
営業担当副社長     徳山  繁
人事担当常務      石田 誠二
人事部長        坂本 利己
人事部課長       山本 隆司
人事部副長(人事)   伊賀  誠
人事部副長(教育)   高橋 亮平
人事部員        有村 夢子
人事部員        高宮 理子
企画部長        中原 賢治
経理部長        神田  豊
秘書部長        天童 真司
東京支社長       村田 圭司
日本海発電所運転課長  武村 一郎
浜波地区区長      武村 源治
浜波地区        武村 克己

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あらすじ

海野雅治は、西日本電力日本海原子力発電所の次長。普段は膨大な技術案件に追われながら、
地元との対応に当たっていた。
人懐っこい性格の甲斐あってか非常に良好な関係を築き上げていた。
そんなある日、同期の坂本人事部長から一本の電話が入る。
将来の社長候補6人の名前が、週刊誌に掲載されたというのだ。
坂本の他、企画・秘書・経理部長・東京支社長そして海野である。
このことを知った瞬間に坂本は強権である人事権を駆使しライバルを追い落としにかかる。
自分の子飼いの部下をライバルの近辺に配置し、大ミスを誘発させる作戦である。
この坂本の策略にはまり、次々とライバルたちが失脚していく。
残りは海野である。
直属の山本人事課長を海野の下に配置し、失敗を誘発させろという命令である。
原子力発電所の運営にあたる海野にまで手をのばせば一体何が起きるか。
もちろん坂本は計算づくであった。

「事故が起きた時がチャンスだ。海野の破滅を確信するまでは事故は収束させるな!」
ライバルを蹴落とすためには、原子力発電所であろうと彼にとっては道具にすぎなかった。
19〇〇年2月、日本海2号機蒸気発生器細管破断事故発生。
過去に経験したことのない、非常用炉心冷却装置が作動する大事故である。
しかし事態は坂本が策略した通りにはならなかった。
山本は海野の人間性に心から心酔し、何よりも地元出身の技術者が海野に心を寄せている
のを知ったのである。逆に坂本の策略が表沙汰になり、候補者から去ることになる。
海野を慕う人たちによって、ギリギリのところで未曽有の原子力災害を免れたのである。
その後、海野は副社長まで上り詰める。本社からの過剰な管理に大きな問題があることを
認識した社長の小村に認められたのである。

小村の厳命で、独立性の高い「原子力本部」を立ち上げ、自由闊達な現場作りを目指すが、
そこでまた日本海3号機事故。
死者まで出す大事故で、今度は管理が緩み過ぎたための反作用と考えられた。
そこに原子力現場にはこれまで以上の厳しい管理が必要と考える新しい強敵「ピンクの蜥蜴」
が現れ、小村と海野の構想は挫折する。

最後に海野は思う。
古来より人間は自然の恩恵にあずかり生きてきた。日が落ちれば眠り、昇れば起きだし働く。
自然が育んだ土に種を撒き食をみたす。この自然の摂理は神の領域である。ここに少しだけ
足を踏み入れて、より利便性の高い生活を目指そうとするのが『科学技術』である。
神の領域に足を踏み入れるものは、他にも増して敬虔で謙虚であるべきである。原子力など
という高度で危い技術を扱おうという者は特に修験者のような清廉さが求められる。
欲に駆られた人間が足を踏み入れようとすると、たちまち神の怒りに触れる。
東京、福島間は300㎞。
ここから都心まではわずか100㎞。東日本大震災の比ではない。
海野は震えが止まらなかった。

以下の4部作です。

1.「電力会社の憂鬱」 第一章 融和と軋轢

2.「電力会社の憂鬱」 第二章 活躍と暗躍

3.「電力会社の憂鬱」 第三章 事故と故意

4.「電力会社の憂鬱」 第四章 改革と挫折

以下よりお楽しみください。
合計で約10万字です。

※「電力会社の憂鬱」 第一章~第四章

小説
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。