電力会社社員の転職者事例。ー絶対辞めるべきだった人もいましたー

ウイーン 就職・転職

今回は2名一度にご紹介します。
理由は両人とも、転職することが必然であったこと。
というか私に言わせると、辞めるべきであったという共通点があるからです。
こういう人も電力会社にはいるという見方をしていただきたいです。

一人は、Aさん。
日本最高峰の国立大学の原子力工学出身で、原子力の燃料の専門家です。
ただし、同大学で原子力工学科と呼ぶのかどうかは定かではありません。
同じ原子力発電所で一緒に仕事をした2年先輩で、引っ越しの手伝いにまで駆けつけた仲です。

もう一人は、地方でナンバー1の国立大学の法学部出身の男です。
彼は同期入社です。

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先ずはAさんの電力会社でのキャリア。

出身大学、専門性、申し分ないスペシャリストです。
原子力発電所現場と本社の原子力管理・燃料部門を往復しておられました。
いわばエリートとして順風満帆というところでしょう。

その彼にもそろそろ決まった道の往復だけでなく、一度違う空気を吸わせようとしたのでしょう。
転勤出向の内示がありました。
I A E A(国際原子力機関)です。
こんなところにも出向先があるのかと驚かれたと思います。
本部はオーストリアのウイーンです。
最近のウクライナ問題で、グロッシ事務局長がザポリージャ原発に駆けつけて有名になりました。
当時、グロッシの前任者である日本人の天野之弥氏が、事務局長に就任したか、する予定とかというタイミングでしたので、その関係もあるのかもしれません。

転職を考えたきっかけ。

I A E Aは国連傘下。
役割は原子力発電だけではありません。
軍事転用防止のための査察、放射線利用など多岐にわたります。
各国の原子力政策など、裏の裏まで体感することができますし、世界のさまざまな原子力政策を知ることができます。
近隣のミサイルを多発する国にも足を踏み入れたことがあるそうです。

転職のきっかけは、世界標準で考えた時「日本の原子力政策は正しいのか」という疑問が湧いてきたことらしいです。
よくドイツの話をしていましたが、自分が大学から会社生活15年くらい信じてきた世界観を自分自身で否定しだしたということです。
驚いたことに、その後すぐに電力というか原子力の業界を去ってしまいました。

転職後のキャリア、現状。

秀才には相応しい配偶者が寄り添うもの。
奥さまは日本一の外国語大学のフランス語学科ご出身。
ウイーンでの生活は奥さまと子供たちの方がエンジョイされていたみたいです。

旦那は国際機関なので「英語」で事足りますが、生活は「ドイツ語」。
元々素養のある奥さまは、あっという間に「ドイツ語」をマスターされたようです。
要は、日本語・英語・フランス語・ドイツ語のマルチリンガルになられました。
これは凄い。
加えて、旦那のわがままやエリートからのドロップアウトに理解を示されたのも凄いと思います。
現在は、東京で「他言語教室」を開いておられるようです。
本人が「英語」と教室運営、奥さまが「英語・フランス語・ドイツ語」担当ということです。
最近、外国人もための「日本語教室」も併設したそうです。
ちなみにこれは私のアイデアです。

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次は、B君の電力時代のキャリア。

地方ナンバー1の国立大学法学部と申し上げました。
実はそれだけでなく、司法試験に合格しています。
司法試験のことはよく知らないですが、正確には短答式・論文式試験に合格し、あとは司法修習だけ。
ほぼ合格済みという状態です。
なんでと聞くと「単なる腕試し」という意味不明な答えでした。
当然、法務部門に配属され、当時多発した公害訴訟の担当をしていました。
主に、被告側として弁護団への情報提供や調整業務ということでした。

転職を考えたきっかけ。

当時、法律の専門家として感じていたことは、やっぱりこういう訴訟も、お金次第。
大企業は経験豊かで、実績も豊富な弁護士を高額な顧問料を支払って訴訟に望む。
勝てる原告などいないということです。

そうこうしているうちに、訴訟は和解ということで決着したそうで、実質的には原告の勝訴のようなものということでした。
この辺りから本人の様子がおかしいような気がしました。

転職してから他の同期から聞いた話ですが「原告団の主張の方が正しい。
今回の我が社の対応は法律家としておかしいところばかり。
人生をやり直したい」。
ということだったそうです。

転職後のキャリア、現状。

当然、改めて司法修習生となり、法曹界に戻ると思っていました。
あに図らんや、母校の仙台に戻り、医学部に再入学したようです。
環境汚染の人体への影響を勉強したいということだったようです。
彼の思考は理解できますよね。
電力会社が依頼した医師の証言がどうも気に入らなかったようです。
現在は、母校ではないようですが、国立大学の教授として教鞭を取っているとのことです。

転職希望者へのアドバイス。

Aさん、B君のケースをご紹介しました。

みなさまからご相談いただいている「人間関係」とか「いなか勤務」とかの悩みは、個々での受け取り方がありますので、なんとも言えませんが、今回は「風雨」と表現させていただきます。
とすれば、今回の2人の思いは「信じていた物事」「サラリーマン人生の寄って立つ地盤」が揺れ動いたようなショックだったような気がします。
こういう場合は「地盤沈下」に至るまでに転職すべきだと思っています。

これまで記事にしてきたように、電力自由化、福島事故以降の電力業界の体たらくは目を覆いたい気持ちです。
ただ、ここまでは外的要因で、業界も気の毒だったかもしれないという気持ちはありました。
しかし至近に明らかとなったカルテルはそうではありません。
完全に意図的な「確信犯」です。
私には才能も資格もありませんが、現役時代にこの事件が発覚すれば、転職せずに定年まで続けることができたか自信ありません。

電力会社は「地盤沈下」一歩手前です。

就職・転職
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。