電力システム改革は失敗でしょうか。そう思わざるを得ない事態です。

チェンジ 企業体質・イメージ

「あなたは原子力発電所に勤務していたくせに、原子力再稼働に反対ですか?」
という質問をいただきました。

とんでもありません!

何度も書いていますが、記録的な気候変動や脱炭素圧力、国際的なエネルギー状況を考えると、
原子力の再稼働・新規立地を検討するしか解はないと思っています。
ただし、現在の体制・システム・電力会社経営陣に原子力の運営を任せてはならない。
と申し上げているだけです。

福島第一原子力事故以降の電力会社は、これまでと全く違う会社のような気すらします。
政府も国も社員も就職希望者も、国民全員でもう一度仕切り直すべきと考えています。

じゃあ、あなたはどうすべきと考えているのか。
今回は最後のまとめで、私の考えと入社間もない方や就職希望者にどう行動すべきか。
私なりの思いをお伝えいたします。

本日トピックス的に本記事を書かせていただいているのには理由があります

  • 新電力の顧客情報を送配電会社が親会社の大手電力に漏洩する不祥事。
    こういう事件があったというのはご存知だと思います。
    当初関西電力だけだと思っていましたが、九州・東北・四国電力でも発覚したこと。
    東京・関西だけが時代に取り残された会社かと思っていましたが、そうでもないようです。
  • 電気事業連合会の池辺会長が陳謝されました。
    この人、前の「カルテル」から謝ってばっかり。
    九州電力の社長でもあり、察するにあまりあると思います。
  • 報道を読み漁りましたが、私の主張・思いそのままの記事を発見できたことです。
    ここまで書かれた記事は見つかりません。
    日経新聞デジタル版です。
    この記者とビールでも飲みながら話したいくらいです。
    ここにURLを載せていいのかどうかわかりませんので、引用させていただきながら、私の意見も
    披露させていただきます。
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電力システム改革の土台の揺らぎ。

送配電会社の顧客情報流出が、法的に別会社であるはずの親会社である電力会社の小売部門との間で共有されていました。
当初、関西電力だけと思われていましたが、東北・九州・四国各電力でも発覚。
このことは、電気事業法での禁じ手であると同時に、電力システム改革を全く無視したもので、自由化と競争を促進するはずが、内向きで閉鎖的な体質を引きずる電力会社の実態を露にしたものと言えます。
大変な事態です。

電力システム改革の土台が揺らいでいる。
自由化と競争を促進するはずが、実際はグループ内でコンプライアンス(法令順守)軽視のなれ合いが続いた。
電力・ガス取引等監視委も「チェックが完全ではなかった。改善の必要がある」と認める。

「コンプライアンス軽視のなれ合い」と指摘し、監視委員会も非を認めました。
ここの意味は大きく、国の基本戦略を電力業界が蔑ろにした。
面目が立たないと言ってるわけで、相当なしっぺ返しがあるぞ、という意味に等しいと思います。

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電力システム改革の空転。

さらに震災後の電力システム改革は、
①地域をまたぐ広域送電の拡大
②電力小売りの全面自由化
③送配電部門の法的分離――の三つの柱を掲げた。
2013年以降、電気事業法は3度にわたって改正した。
と解説した後、

2022年には関西電力と中部電力、中国電力、九州電力が、企業向け販売でカルテルを結んでいたことも露見した。
電力改革の空転は隠せない。
電気代の高騰で消費者の視線も厳しくなっている。
電力を安定供給しながら改革を再加速する必要がある。

と糾弾し、最後に監視委の前委員長のコメントまで取っておられます。

ヨーロッパは資本関係も切り離す「所有権分離」を採用している。
独立性が最も高い仕組みだ。
日本は震災後の議論で「将来の検討課題」と位置づけたが、一連の不祥事で再浮上する可能性がある。
監視委は「漏洩には重い罰金を科し、それでも続くなら電力会社と送配電会社の資本関係も切り離すべきだ」と話す。

電力会社にとって、最重要なステークホルダーを激怒させています。
本記事は、私の主張・思い・懸念・心配をまさにそのまま表現いただいたものです。
日経新聞は当然経済ネタを書かれるものと思っていました。
ここまで社会ネタを掘り下げていただけるとは思っておりませんでした。

まとめ。

電力会社社員・就職希望者はどうすればいいのでしょうか。
まず私の考えをお示しいたします。

私の考え。

電力システム改革は、日経新聞の記事が正しければさらに進む。
進めるべきと期待します。
「所有権分離」という現電力会社にとっては解体的改革となるかもしれません。

原子力発電の運営は各社とも現経営陣(=昭和の体質を引き継ぐ人たち)には無理です。
何かが起きると思います。
国かそれに類する機関が全発電所を統括管理すべきです。
何かあれば一電力で責任を負えないことは福島で証明されています。
火力発電も、現体制では2050年カーボンフリーに向かうとは思えません。
これも原子力同様の対応が正しいと考えます。
大手電力会社は、水力発電を含めた再生可能エネルギーを保有する新電力相当会社として出直すしかありません。

私の切望です。
冒頭「原子力反対か」という質問された方の答えにもなっていると思います。
原子力しかありません!技術的には。です。

社員・就職希望者の方へ。

まず、次回の株主総会の役員異動に注目してください。
電力会社の役員はプライドが高いので絶対に引責辞任はしません。
「カルテル」は営業担当、情報漏洩は「CSR・コンプライアンス担当」。
役員分掌は総会資料に記載されますのでチェックしてください。

不自然な交代があれば引責です。
追い込まれた結果です。
でもこの会社は正気を取り戻すかもしれません。

できれば昨年の株主総会で誰かが退任していないか見てください。
不自然な関係役員の退任があれば最悪です。
不祥事が明るみに出ることを知っていたか、予想していた可能性があります。
先逃げです。
この会社はもうダメです。

就職希望者のみなさん。
電力会社の形はどうなっていくのか予想不可能です。
しかし電力供給事業が無くなるはずがありません。
先が見えない部分はありますが、勇気を持って目指してください。
みなさんが逡巡しておられるような、入社高難易度な会社では無くなっていく可能性もあります。

転職希望者のみなさん。
今の悩みや転職希望理由。
日経新聞の記事が正しければ、全てご破算です。
むしろ、新しく見えないワクワク感みたいなものを感じませんか?
いなか勤務の連続なのか、体育会系なのか、何もわかりません。
やりたいことを探す「自分探し」は卒業して、やっている事・これからやる事を好きになるという発想に切り替える大チャンスです。

企業体質・イメージ
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。