原子力をどう思うか。必ず聞かれそうです。
今回は私ならどう答えるか、を書きます。
何を書こうが、誰からも咎められる立場でもありませんし、就職活動に後ろ向きに作用する心配のない人間のコメントです。
ですから超個人的見解です。
ただし、40年間の経験にのっとったものであることは間違いありません。
「こういう見解もある」という感じの「参考値」としてお聞きいただくと幸いです。
文脈を利用して、ご自身の意見をお考えいただいても一向に差し支えありません。
著作権フリーです。
技術的課題に関する考察は、わりと簡単です。
2回に分けて技術的課題というか、なんでこんなに当たり前のことが話題にならないのか。
という点、「原子力発電所の型式」と「原子力の性能」についてのお話をさせていただきました。
ただ「原子力の型式」につきましては、北海道/関西/四国/九州各電力が加圧水型、東北/東京/北陸/中部/中国各電力が沸騰水型と、日本を2分するような採用をしています。
また福島第一と同程度の年月が経過したプラントも各社とも多く保有しております。
まさに私だから言える話だったと思います。
ご自身の狙っておられる会社の状況を踏まえてお考えください。
相手の気分を害するのは本意ではないと思いますので。
また、前向きなお話としてのSMRにつきましては、もうすでに経産省やメーカーからのレポートが出ておりますので、是非インプットしておいてください。
政策的課題。これは大変です。
今も昔も、エネルギーあるいは電源ベストミックスという言葉があります。
資源小国である我が国では、コレっというように決めてしまうことがリスクです。
テーブルの上に、あらゆるエネルギー源を並べ、安全性・経済性・調達の難易度などを評価し、良いものを組み合わせて国全体のエネルギー供給の形を決めていこうというものです。
私が現役時代には、原子力で電力供給の50%を賄うという時期もありました。
その考え方には調達コストとリスクが高い有限資源である化石燃料から、できるだけ原子力にシフトしようという国民的コンセンサスがあったような気がいたします。
現在のベストミックスはどうなのでしょう。
当時とは全く違うものに見えます。
「石油、石炭」には温室効果ガスの削減圧力があり、期待の「LNG」にはロシアのウクライナ侵攻の影響が翳を落とします。
そもそも「LNG」も石油の70%、石炭の50%の温室効果ガスを排出すると言われていましたがどうなのでしょうか。
原子力は福島第一事故以降、ご承知のような状況です。
ヨーロッパでは「50年ぶりにオイルショックが襲いかかります。電力会社も正念場」でも書きましたが、いつの間にやら「原子力、LNG」の位置づけが「グリーンエネルギー」に「したたかに」変更されています。
私の現役時代のベストミックスとは意味合いが全然違うようです。
例えると、昔は有り余る金融資産の中で、銀行口座を一つだけ解約してエネルギーを賄おうとしていたのが、今は全体として不足している資源を、ありったけ引き出してなんとかしようとしているように思えます。
政府は第6次エネルギー基本計画を閣議決定した際「再生可能エネルギー」を中心に、エネルギーベストミックスを目指すとか、お花畑コメントをしていましたが、本当にそう考えておられるのでしょうか。
もうすでにほころびが出てきています
関電が蔵王の風力発電計画を撤回、宮城・山形両県から“集中砲火”
関西電力は、宮城と山形の両県にまたがる蔵王連峰で検討を進めていた風力発電事業を撤回した。
景観や自然環境への悪影響を懸念する両県から“集中砲火”を浴び「環境への配慮と事業性の両立が難しい」と判断した。
同社が2022年7月29日に明らかにした。
中止したのは、宮城県川崎町で計画していた「川崎ウィンドファーム事業」。
山形市との県境にある蔵王連峰の約1600haの区域に、ブレード(羽根)の上端の高さが最大約180m、ブレードの回転直径が最大約160mの風車(4200~6100kW級)を最大23基設置する予定だった。
なぜ関西から東北まで発電所を建設に行ったのかについては前に記載させていただきましたが、地元の猛烈な反対を受けて断念したようです。
風力という「自然エネルギー」由来なので、反対はないだろうと思い込んでいたのだと思います。
「自分のところは嫌だ〜、ほか行ってやってくれ。」これが日本人です。
- 再生可能エネルギーへの<過度>な期待。
- 温室効果ガス削減圧力による、石油・石炭・LNGの削減。
- ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー戦争。
- 原子力の廃炉、風評被害対策、今後の扱い。
- 何より手がかかる電力会社の企業体質。
課題は山積み状態です。
私の意見です。
前述のように、どのエネルギー源も「帯に短し襷に長し」です。
特に政府が期待する「再生可能エネルギー」はどうでしょう。
蔵王の例でも明らかですが、期待薄です。
太陽光も改めて記事にしますが、問題点は多いです。
というか今冬の電力需給が危ないというときに、議論しているネタではありません。
思い返せば10年前から同じ議論がありました。
福島事故の影響で原子力は全停止。
産業界には生産活動の停止、国民には地域ごとの計画停電を要請せざるを得ないという状態に陥りました。
その時に経済団体連合会のどなたかが、会見で仰ったコメントが印象に残っています。
経済活動の減速はやむを得ない。
だが、政府は目先の話だけでなく、先の見通しを話すべき。
「経済」をとるのか「原子力」をとるのか、決断する時がやってきているのではないかと思う。
このコメントは珠玉です。
言いたかったのは「原子力」か「再生可能エネルギー」かという選択ではありません。
今後、原子力以上の経済成長エンジンが出てくるとは思えません。
私が今、世に問うべきと思っていますのは、これまで通り原子力に頼るのか、原子力「0」そのかわり経済規模の縮小やむなしとするのか、という国民的判断です。
原発「0」を目指せば、当然、GDPで世界3位などというのは無理でしょう。
でも10位とか15位の国は不幸せでしょうか?
別のところにも人間の幸せはあるのでは?
コロナ禍でそう思いました。
特に、自分の身の回りに嫌悪施設である発電所が来るのは絶対に嫌。
でも経済は大事。
こんなわがままは許されるわけがありません。
原子力を断念するならそこまでの「覚悟あるエネルギー政策」が必要です。
面接官への私の回答です
上記の私の考え方に共感される方は、自分の言葉に加工していただいてお使いいたいて何の問題もありません。
少しリスキーだとお考えなら以下はどうでしょう。
まず、電力会社の面接なので、原子力を放棄するというスタンスの回答はないと思います。
その上での回答です。
- 技術的論点はいくつかありそうですが、「世界一厳しい規制基準に合格したプラントから順次再稼働」という政府見解には賛成です。
昨今の電力需給ひっ迫を乗り切るには原子力の再稼働しかないのは明白です。 - 長期的にも脱炭素やエネルギーセキュリティーの観点で、電源ベストミックスの選択肢がどんどん減ってきているのが現実です。
- 期待の「再生可能エネルギー」もまだまだ時間がかかります。
- 現実的な選択肢としては原子力の新増設しかないような気がいたします。
福島事故による国民感情や放射性廃棄物や風評被害など、ハードルは高いようですが、「小型モジュール炉」など、新しいイノベーションも芽吹きつつあると聞いています。 - 入社できれば、是非○○○の仕事に就きたい(研究に携わりたい)と考えています。