どんな人が電力会社に向いているのか
「うちに入社して何をしたいの?」この会社側の質問にお答えしてみようと思いました。
でもその前に自問自答しました。
「そもそもどんな人が電力会社に向いているのだろうか?」40年前なら間違いなく、嘘でも良いから目を輝かせて「何でもします」この答え一択だったでしょう。
もちろん今の若者にも昔でいう「熱い青年」はおられるでしょうが、そんなんでは今の就活は乗り切れないでしょう。
就活のコンサル会社にでも聞けばわかるのでしょうが今回は想像で書きます。
どんな人が電力会社に向いているのか。
まずは「無気力な人」です。
驚かれましたか?逆説的に書きました。
別の記事で、電力会社のこれからの厳しさをお伝えしました。
それでも「電力会社は安定していて潰れることはない。」
だから入社したいとお考えの方。
楽なサラリーマン生活を送りたい。
だから収入は低位安定でも問題なく、出世欲もない。
そんなあなたにはお勧めの会社です。
電力会社ではなく電力供給事業と理解すると絶対に「潰れること」は無いでしょう。
自分が所属する会社の環境、ひょっとすると社名まで変わることがあっても、簡単に職を失うことはないと思います。
ただ、会社人生40年くらい、棒に振るような、心にぽっかりと穴が開いたような虚無感に囚われることもあろうかと思います。
そこは覚悟の上というか、割り切られた上でのことだと思います。
それも人生の一手です。
もう1タイプは、入社するからには、社内で自分の立ち位置を確保し、プレゼンスを高めていきたいとお考えの方です。
そういう方は以下のアクションを今すぐ取ってください。
業界の勉強と研究
まず各電力会社、電気事業連合会、経済産業省、環境省、その他各団体のHPで研究してください。
表層を撫ぜるだけではなく、広く深く知ってください。
私も今後テーマごとにカテゴリーに分けて配信するつもりですが、もしご不明なことがあれば、私のできる範囲でお手伝いしますのでご連絡ください。
すでに記事化しているテーマは、そのリンクを参考表示しておきます。
電力会社の企業環境の変化
- 70年間の電力会社の歴史と、取り巻く環境にどのような変化があった、あるのか。
- 最近、マスコミを賑わせる出来事・不祥事とはどんなもので、何が原因か。
参考:電力会社を変える4つの環境変化。就活生の皆様、これがキーです。
変わりたい変われない電力会社の企業体質。このままでは周回遅れに。
エネルギーセキュリティー
- 世界、日本のエネルギー問題の動向は。
- 第6次エネルギー基本計画に対する意見は。
- ロシアのウクライナ侵攻の影響は。
参考:資源小国の電力会社にとって、エネルギー資源の確保は永遠の課題。
50年ぶりにオイルショックが襲いかかります。電力会社も正念場。
オイルショックは遠い昔の物語?電力会社を今も悩ますエネルギー調達。
原子力
- 福島第一原発事故とはどういう事象だったのか。
単に津波による全電源喪失事故というだけでなく、日本の原子力発電所の採用型式や年式。事故の深層や本当の原因は。 - 事故以降の世論、政府のスタンス。将来のエネルギー計画への影響など。
参考:電力会社面接官からの、原子力発電に関する質問の回答(例)です。
原子力発電の技術開発、技術進歩の話はほとんど話題になりません。
電力会社就活での原子力に関する質問のベストアンサーを考えます。
東京電力福島第一発電所、処理水の海洋放出が正式決定しました。
温暖化
- 地球温暖化対策の歴史。主に京都議定書からパリ合意まで、何が決まったのか。
世界や日本の対応は。 - 地球温暖化対策として電力業界に求められていることは何か。
それは業界にとってどのような意味を持つのか。
再生可能エネルギー
- 再生可能エネルギーへの世界や日本の開発状況は。
日本の将来に向けてのスタンスは。 - 再生可能エネルギーの電力業界にとってのメリット、デメリットは。
自由化
- 電力自由化の流れと功罪は。
新電力の現状は。
電力再編
- 分社化を目指した国の考え方と電力業界の対応は。
- 送配電分社化の実態は。
今後どうあるべきなのか。
少し考えただけでも研究すべき課題は山積みです。
ご自身で研究されるときに、自分の興味関心や得意分野を見つけてください。
必ずそういうテーマが見つかるはずです。
そのテーマこそが「君はうちに入社して何をやりたいの?」という面接官の質問や、筆記試験への答えです。
コツはより具体的であること
「再生可能エネルギーに興味があるので、それに関わる仕事をしたい。」
ではだめです。
「再生可能エネルギーで有望な太陽光発電に取り組みたい。
もし原子力の再稼働が実現したとしても、電力会社での開発も必要と考えます。
新電力も再生可能エネルギー由来の電力という売り文句にしていますので。
山間部に保有土地が多い電力業界にはアドバンテージがあると思います。」
という具合に、具体的な答えが求められます。
ただし、興味はないけど受けそうだから言ってみた。というのは避けるべきです。
彼らは覚えています。
私のアイデア
サービスで塾長個人がいま思っているヒントをお示しします。
出典を伏せていただけるならばフリーにお使いいただいて結構です。
- 原子力発電は再生可能エネルギーがいかにもてはやされようと絶対に必要なものです。
発電時に二酸化炭素を排出せず、温室効果ガス削減に大きく寄与することは間違いありません。
政府や電力会社は、現状のプラントの再稼働だけではなく、新規立地やリプレースまで視野にいれていることは間違いありません。
ただ福島第一原発事故が大きくのしかかり、言い出しかねているというのが実態です。
そこで将来登場するのが、SMR=小型モジュール炉です。
これまでの大型原子炉ではなく、出力は5~10万キロワットと小さいですが、大量生産が可能でハンドリングし易いというメリットがあります。
各国でさまざまに研究されていますが、ビルゲイツも資金援助に乗り出していることで有名です。
これに既存電力会社も乗り出しても何の不思議もありません。
これまで原子力産業に力を入れてきた三菱重工は既に開発を進めています。 - 次のキーワードは「蓄電システム」です。
電気は生産即消費という特殊な商品。
それがボトルネックになることが多々あります。
例えば電気の商品取引が活性化しないこともこれに起因します。
もちろん電力不足が慢性化し、商品がないことが原因ですが、蓄電システムがあると「安く買って高く売る」という当たり前の商取引が可能となります。
また、再生可能エネルギーのシェアが増えてくると、発生する電気の品質が問題となります。
簡単に表現すると、太陽光で晴れた日に電力を溜めておき、雨の日に送れば、供給が安定化します。
さまざまなメリットがあり、どんな電源構成になろうとも脚光を浴びるイノベーションだと思います。
一部には、発電所ならぬ「蓄電所」を計画している電力会社もあります。 - 順調に原子力が推移し、蓄電システム等のイノべーションが進めば、電力供給の安定化だけではなく、温室効果ガスのカーボン・オフセットやクレジットのサプライヤー事業も視野に入るのではないでしょうか。
- 2022年4月から、FIT制度(電力会社による再生可能エネルギーの固定価格買取制度)がFIP制度(電力取引市場での取引価格上乗制度)に変更されます。
電力取引市場の活性化を目指す経済産業省の意図が強固なことの現れです。
これまでのような、おざなりな対応では許されるものではありません。
むしろ市場を積極的に牽引する対応なども検討する必要があります。 - 発電の地産地消化。発電所というと決まった場所で立地し、広範囲に供給するというイメージがありますが、小さい発電設備で近隣の地域にのみ供給するという考え方です。
投下資本も小さく、この考え方が全国的に広がれば、それはそれで十分成立します。
以上はイノベーションを伴うヒントですが、違った見方で2つほど。
- さまざまな変化と技術革新をリードしていくべきは大手電力会社の役割ですが、そういう企業風土に舵をきるのも重要なことです。
電力会社の企業体質は、70年間何も変わっていません。
その中に入り、人事評価システムや人員配置の見直しなどにタッチしたいとアピールするのも一手です。
少し内向的な人にお勧めかもですが。 - 2000年の電気事業法改正以降、さまざまな事業を検討してきています。
電力関連事業と企業シーズの有効活用がメインですが、まだまだ検討の余地はあるように思えます。
これだけの環境変化が周辺に起こりそうということであれば余計です。
このあたりに焦点をあててアピールする手があります。
ただし具体的な事業アイデアを持っていなくてはいけませんが。
キーワードは、イノベーションとその技術の事業化だと思います。