電力会社就活生の疑問にお答えします。ー給料レベルと福利厚生は?

Q&A:給料、福利厚生 Q&A

この種のご質問は多数きています。気になりますよね。
大谷翔平選手のど真ん中の100マイルのフォーシームのような「ドストライク」の質問です。
「いやしくも電力事業に携わる者は自分自身の処遇などより、日本の産業や国民生活のために何をすべきか考えるのがインフラ事業に携わるものの一丁目一番地」などとは申しません!
このようなコンセプトで事業活動にあたることも当然必要ですが、一人の社会人として家族を持ち、その生活を考えるのも当然のことです。
筆者が若いころ「台風などの自然災害の際、自宅を顧みず会社で寝泊まりして対応にあたった」ことを自慢している先輩がいました。
今は「家族の安全を確認して、安心して社業にあたった」でしょう。
ドジャースの選手の家族愛に違和感がない人が殆どだと思います。その昔は、職場である球場に家族を入れてハグするなんて、という感じだったでしょう。
時代は大きく変貌していると思います。

知る限りをお伝えいたします。
ただ、初任給額や平均年齢の年収など、ものの本を見たらわかることは書きません。
電力会社の内部にいたから思う事、給料を貰い続けたOBの感覚的なお話をさせていただきます。
したがって記事は、独善的かつ大雑把、しかも個人的感触になります。
悪しからずご容赦願います。

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就活支援サイトでは、給料が良いというのが大半ですが、そうではなく、安定しているが安い、という記載もあります。本当はどうですか。内部におられた感触は。

就職支援サイト。
どうかと思いますね。
別のご質問で分析します。というか暴きます。
良い・悪いを場面場面で使い分けているのでしょう。
あるいは聞く相手ごとに異なるので、両論併記しているのでしょう。
リアルな社員の感覚を調べる訳がないので、あまり気にする必要はありません。
彼らは不安な就活生・転職希望者に寄り添っている(ふり)だけです。
仕事として。

電力会社の給料が高いか安いか。

企業別のランキングみたいなのがありますが、基本は主観ですよね。
と言ってしまえば元も子もないので、少し分析的に書いてみます。

筆者が入社して当時、人事担当役員から「君ら一人を採用すると、会社は2~3億円の投資である」。
と言われた記憶があります。2~3億円は生涯賃金のことだろと思いますが、当時は若かったので、
「投資だったらハズレもある。恩着せがましく言うな」と思っていました。
生意気ですよね。
でもこれを聞いた時、ハッと思ったことがあります。給料が高いとか安いとか言いますが、気にしているのは、今目の前の報酬というだけ。
生涯賃金はどうなんだろう。
みなさんには違和感があると思いますが、筆者は基本的にどの企業も同じと思っています。
ここからもっと、感覚的な話になります。

企業の給料には4種類あると思っています。
 ➀ずっと低位安定企業。       ➡メーカー・役人。
 ➁若い時は低位。どこかで急増曲線。 ➡電力会社他の公共企業。
 ➂若い時から高給。はては先細り。  ➡銀行・広告代理店。
 ➃ずっと高給で最後まで。      ➡商社・外資系。
語弊あれば平身低頭謝ります。でも筆者はそう思っています。

もっと掘り下げます。

  1. 筆者の弟は、SE(システムエンジニア)として名前を挙げれば誰でも知っている重・家電併営のメーカーに入社しました。筆者が自宅のローンを組む際、保証人を頼み彼の源泉徴収票を見ました。「これでこいつの家計は大丈夫か」と思うほどの安さでした。しかもSEという職種の日進月歩は凄まじく、40歳を超えたらもう変化についていけず肩たたきが始まるということでした。
    ただ出世ペースは他部門と比べて倍速で、そこで帳尻を合わしているのだとも言ってました。
    兄貴の心配通り42歳で子会社のロジスティック会社に出向となりました。
    その後、海外勤務を本人が選定し、バンコク→上海→ワルシャワに赴任し定年をむかえました。
    給料は想像通りだったようですが、海外勤務の充実感は金銭に変えられないものであったようです。会社人生の意味付けを充実していたと考えるなら、2~3億と言われる生涯賃金に匹敵するのではないかと思っています。
    感覚的な話ですいません。
  2. 電力会社他の公共企業です。
    若いころは本当に薄給で、これで将来は大丈夫だろうかと悩みました。入社当初は残業もあまりなく(その後はとんでもない残業でした)、夜の2~3時間だけでのアルバイトはないものかと真剣に考えました。
    詳細は次項でお伝えします。
  3. 羨ましい限りだった銀行や広告代理店です。
    仕事柄、広告代理店の人との付き合いがありました。電通や博報堂という大手ところですが、同い年くらいで手取りで倍近い給料を彼らは貰ってました。詳しく聞くと広告代理店は「交際費の給料渡し」的な意味合いがあるそう、しかもその君いわく「若くしてお払い箱で退職金も微々たるもの。生涯賃金は電力さんのほうが絶対多いです。」ということです。また銀行も現役時代は凄まじい給料ですが、ごく一部の幹部候補をのぞき50代で出向、事実上の定年で、後半先細りとのことです。でも生涯賃金は同じくらいかもしれません。
  4. 総合商社は筆者の就活でのあこがれでした。ことごとく失敗しましたが。
    ここの生涯賃金はおそらく①~➂を確実に凌駕しています。妻の実家が商社一家だったので間違いないと思います。
    反面仕事は激務。義兄が総合商社で「石油」の担当だったので中東赴任の繰り返し。結果体に異常をきたし、早期退職。本人いわく「生きてるだけまし、会社人生良かったことはアラビア語が話せるようになっただけ」と愚痴ります。
    生涯賃金は失った人生の時間、余裕、楽しみ、こんなものを減算すると、生涯賃金は同じくらいかもしれません。

さまざまな会社があります。就活生のみなさまは、給料・仕事の密度など気になることは理解できます。筆者が言いたいことは、まあまあの大企業に就職される限り、金銭収入と人生の生きざまを加減算すると解は同じだと思います。
まわりくどくなりましたが「あまり気にするな!」というのが筆者の結論です。
確かに電力会社は若いうちは薄給です。
金銭的苦労は人生の糧。笑い飛ばしてください。
以下、筆者の経験則です。

40年勤務したオッサンの感覚。

電力会社の給与はに関する筆者の感触は、

  • 入社何年間はギリギリ生きていけるようなレベル。
  • 少し慣れてから中堅までは残業代で生きている感じ。
  • 役職がついて少し楽、でも出銭も多い。
  • 特別管理職になるとぐっと楽に。

という感じです。前に別の記事で、同じようなことを書いてますので参考に。

初任給は私の入社当時は他社と比べて低ランクだったような記憶があります。
結婚する前に、妻の実家にボーナスの給与シートを持参しました。
妻の父親は総合商社でしたので、月給と勘違いされたという、笑い話にもならない出来事がありました。結婚当初は休みごとに両方の実家に帰り食事代を浮かして栄養補給をしていました。
比較的若くして結婚したもので、しばらくの間は残業代に頼るしかありません。
最も大きな変化は、やはり東日本大震災でした。
世間には計画停電要請。
経産省電気事業制度部会の「電力会社も当然身を切るべし」という指導は厳しく、給与は半額、ボーナスカットなどという会社もあったと思います。
サラリーマンですので、住宅ローン設計をボーナス時3倍とかいう人が多く、サラ金に走る社員もいるのではないかと心配すらされました。
でも、これも公務員ではないので事業リスクの一つと考えなければならないのかもしれません。
大変気の毒でしたが、今では満額ではありませんが、少しもどりっつつあるようです。
一般的には徐々に昇給し、十何年か後に特別管理職(労働側でなく会社側)になる際に給与体系そのものが変更されます。
この時、残業代はなくなりますが、一挙に生活が楽になった印象があります。
やはり決まった金額が毎月振り込まれる、というのは安心感があると思います。

電力会社は楽。本当ですか?生活・肉体・精神、あなたの楽の基準は?

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電力会社の福利厚生について教えてください。給料が安いのははやむを得ないととして、せめて福利厚生だけでもと考えています。

これも何件かご質問をいただきました。

筆者も入社時には「電力会社は給料は安いけど、福利厚生が充実しているらしい。」などと親から言われました。どこから聞いたのかはわかりませんが。自分のイメージだけかもわかりませんが。

結論は悲しいお知らせとなります。
筆者が入社して頃は親の言葉は「中らずと雖も遠からず」でした。
今は、全くそんなことは無くなり、普通の会社なみです。
そう「普通の会社なみ」です。決してブラックに転落したわけではありません。
勘違いしないようにしてください。
自由化による競争環境への突入、福島原子力事故、度重なる不祥事、経営環境が大きく変わったことが「普通の会社なみ」にならざるを得なかったのです。

住宅助成、厚生施設・行事、退職金の順に解説します。

住宅助成

これが一番手厚かったように思います。
新婚社宅・家族社宅エリア内くまなく用意されており、家賃は8000~12000円/月。
用意されていない地域では賃貸物件を借り上げ、オーバー分は補填してもらいます。独身寮・単身寮もほとんどただみたいな賃料でした。
また30代半ばになると社宅・寮は転居を勧奨されますが、それは自前の住宅を考えたらどうかという意味です。そのために入社時から「住宅積立預金」(社内預金)を勧められ、利回りも8%という時代もありました。また会社がローン相当分の貸付もしてくれました。公庫や銀行金利よりはかなり低金利だったような気がします。
言葉では聞いたことはありませんが、電力会社に入社した社員の人生設計に会社の定見みたいなものがあり、それに併せて徹底的に支援するという雰囲気でした。信じられませんよね。

今では社内預金制度やローンの貸付は無くなり市中並み。社宅も自由化でマンション建設用地に変貌し収益物件となっています。そこに入居したければ少しは優遇されるという程度のようです。

厚生施設・行事

管内の名所にぽつぽつと社員用の保養所が点在していました。そんなに一般の旅館・ホテルと比べて贅沢なものではありませんでしたが、若い家族が宿泊するには充分な施設でした。
特に東京ディズニーランドの近所にできた時は子供たちは大盛り上がりでした。

このような施設も、老人ホームなどの収益施設に生まれ変わっています。
代わりにカフェテリアプランが導入されていると思います。

また厚生行事としては、年一回の全社運動会が実施され、支店対抗で大変な盛況でした。その他職場ごとの慰安会の補助などもありましたが、全て廃止されています。

退職金

これは筆者にも影響大でした。
少し先輩の世代までは、全額会社に預ければ、高利回りで運用してくれ、目減りすれば補填というようなこともあり、老後の不安感もずいぶん緩和されていたと思います。
それが筆者の世代になると401Kの導入です。参りました。愚痴です。

福利厚生のあるべき姿

以上のように、筆者の親が言うような福利厚生が理想とすれば、大きく後退しています。
というか取り巻く環境変化が後退を余儀なくしたという感じです。
でも今就活をしている若者がこんな福利厚生をお望みでしょうか。
本文にも書きましたが、電力会社の古き福利厚生は昭和の遺物です。
会社の描いた社員の人生設計の通り生きる社員にはピッタリの制度です。
さらに男女雇用均等法以前は、女子社員はお嬢様を優秀な社員との結婚要員として採用する。みたいな話までありました。
今や、自分の人生は自分で決めるとお考えの方の方が大勢であり、そうあるべきと思います。
会社とのウエットな関係を築きたい昭和最後の企業です。
今の状態が正常だと思います。

 

電力会社のお仕事内容を事務系(文系)と技術系(理系)に分けて徹底的具体的に解説しました。面接の予習として必ずお読みください。40年実際に努めた爺さんが書いています。
他には絶対にありません。
※みんな知らない電力会社のお仕事。 超具体的解説:文系(事務系)。
※みんな知らない電力会社のお仕事。 超具体的解説:理系(技術系)。
Q&A
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。