再エネの電気料金は気になりますが「電気の品質」にも注目です。

停電復旧 再エネ
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電力会社にとって、再生可能エネルギーは厄介者です。

いよいよ「再生可能エネルギー」に関する記事を配信します。
原子力と並ぶ、ゼロ・エミッション電源であることは間違いありません。
政府も第6次エネルギー基本計画を閣議決定の際には「将来の主要電源」としてコメントした上で、2030年度目標を36〜38%という野心的な数値を打ち出しています。
また単なる数値目標だけでなく「脱炭素を新しいイノベーションと位置付ける」とも発言しています。
当ブログでも「再生可能エネルギー」に触れないわけにいかないと考えています。
さまざまな情報源や考え方があり、何記事になるかわかりませんが、徐々に積み重ねていきたいと思っています。

ちなみに、再生可能エネルギーの定義については「エネルギー供給構造高度化法」において政令で定めるものとされており、政令では「太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他自然界に存する熱・バイオマス」が定められています。

政府が言う「新しいイノベーション」が存在するのかどうかわかりません。
このあたりは、電力自由化のカテゴリーで新しいビジネスモデルを私案としてご提案したいと思います。
年寄りなので、実行力はありませんが、なるほどと思われた方は具体的ビシネスとしてご検討いただきたいと思っています。
乞うご期待。

また、電力会社はメーカーではありませんので、どういうビジネス・イノベーションがあるのか考える必要はあります。
こういう仕事がお好きな方は面白いかもしれませんね。
でも、現状では電力会社にとっては迷惑千万とまでは言いませんが、厄介な電源のようです。

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電気の品質を守るのは電力会社の使命です。

電気にも「品質」があることをご存知でしょうか。

電気は車や家のように、予算があれば、良いものを買えるという商品ではありません。
どの電力会社と契約されても、ほぼ同じ品質の電気が供給されます。
なんか今日の電気は明るいとか、フリッカーが多いとかお感じになる時もあると思いますが、ほとんどは電気機器の問題です。
電気にも「品質」と言う概念はありますが、電力会社での処理をした上で管理された電気を皆様に供給しています。

電圧・周波数の安定

電気の品質とは一般的に「電圧・周波数・安定供給」といわれます。

電圧は、一般家庭の場合は標準電圧が100Vで、105〜107Vの範囲で維持すべしと定められています。
周波数は、最近「電力融通」の話題でよく耳にしますが、東日本で50Hz、西日本で60Hz、±0.1〜0.3Hzの範囲で維持するように調整します。
電圧や周波数の多少の変動は一般家庭には大きな影響はありません。
しかし工場などの産業機器レベルでは、製造機器にストレスがかかり破損したり、寿命が短くなったりします。
またそこで作る製品に品質低下や工場の製造ラインへの影響も出ます。

安定した電圧と周波数を保つために最も大切なことは「需要」と「供給」のバランスをとることです。
ご存知の通り、このバランスとは「同時同量」の維持です。
各電力会社に「給電指令」という部門があり、時間ごとの需要予測と供給対応(すなわちどの発電所を動かすか)を毎日繰り返しております。
何を稼働させるかにつきましては「有線給電ルール」に則っていますが、専門的になりすぎるので割愛いたします。

安定供給

「給電指令」にはさらに心配事が襲いかかります。
「安定供給」を脅かす事態が忍び寄ります。

  • 原子力停止による慢性的な電力不足。
  • 夏・冬ピークの電力需要逼迫。
  • 他電力への融通。
  • 異常気象による台風の多発と激甚化。
  • 老朽火力の稼働。(いつ停止するかわかりません)

それでも日本の電気の安定供給は世界トップレベルで、停電もほとんどありません。
絶対に大規模停電や計画停電に至ることがないよう、予備力確保を目指しております。

電力需給バランスをキープし、電気の品質を維持する仕事は専門的でかつ神経をすり減らすものであることはよく聞きました。
さらに最近になり、新しい課題が登場してきまいた。

それが「再生可能エネルギー」です。

「再生可能エネルギー」の電力運用としての難しさ

太陽光、風力、地熱、中小水力、バイオマスといった再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出せず、国内で生産できることから、エネルギー安全保障にも寄与できる有望な国産エネルギーです。
再生可能エネルギーの推進は国家ミッションでもあり、その推進自体を否定するものではありません。
ただ、電力運用という観点からは、ここにきていくつかの問題点を露呈致しております。

  • 再生可能エネルギーのほとんどは、気象条件に大きく左右される不安定な電源です。
    発電と消費量を一致させるため、比較的出力調整の簡単な火力発電や揚水発電調整していますが、あまりに発電量が増えすぎると再生可能エネルギーそのものの出力を調整せざるを得ない状況となります。
    結果的に不安定な電力だけで需要が賄われるような事態となります。
    またこの時に「需要」と「供給」のバランスが大きく崩れると、大規模停電の発生につながることとなります。
  • これまでの電力システムは、発電所→(超高圧・一次・二次・配電用)変電所→産業・一般需要家とという、一方向に電気が流れていくことを前提に構築されています。
    これが再生可能エネルギーの普及により「逆潮流」という現象を生み出します。
    その結果、電圧が上昇し、品質を維持できなくなる恐れもあります。
    再生可能エネルギーを系統に接続する際に、「系統に繋げない」「費用が高い」「時間がかかる」と批判される系統制約の問題点が顕在化します。

迷惑とまではまではいきませんが厄介ですね。
こんな専門的な技術的課題を解決できるのは電力会社しかありません。
大変ですが、こんなことで世界でも有数な日本の「電気の品質」を揺るがせるわけにいきませんよね。

再生可能エネルギーを個別に勉強される前に知っていただきたい、基本のお話です。
次回から個別に解説いたします。

再エネ
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。