災害時の停電復旧は「電力自由化」のビシネスモデル。意外ですか。

神戸夜景 自由化ビジネス

1995年1月17日、5時46分。
阪神・淡路大震災が発生いたしました。
兵庫県淡路島北部沖の明石海峡を震源地として、マグニチュード7.3。
近畿圏を中心に6,434人もの犠牲者を数える大災害でありました。

大好きな神戸が見る影もないほど破壊され、何度か訪れた山頂から見る「1000万ドルの夜景」は一瞬にして暗黒の世界となってしまいました。
会社は違いますが、同じライフライン関連の企業に籍を置くものとして、また神戸を愛するものとして、一時間でも早い復旧を祈らずにはおれませんでした。

結果として、ライフラインの復旧は、神戸市の例では、電気ー7日間・ガスー85日間・下水道ー135日間で、周辺の被災地でもほぼ同じ順・日数での復旧となりました。
神戸の夜景が順々に元に戻る様子をテレビで見て、美しさに改めて感動を覚えたことを記憶しています。

今回は何も電力は復興が早かった、電力マンは優秀とか、自慢しようという意図は全くありません。
物性が全く違うもので、搬送方法も全く違います。
ガスや水道は搬送に「管」が必要で、あれだけの地中での揺れが起きれば、さまざまな不具合が起きているのは明らかで、全管路の点検は気の遠くなるような作業です。
特にガス管は水が混入すると、復旧は大変厄介と伺っております。

当時は電力自由化前でしたので、電力会社の送配電部門と系列の電気工事会社のみが復旧に対応したものと思われます。
でも今ならどうか、ビジネスとして考えることは可能かどうか、そうすればもっと早く復旧できたのではないか、考えてみたいという趣旨であります。
ネタが大災害ですので、ビクビクしながら書いています。
語弊があればお詫びします。

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阪神淡路大震災、それから。

阪神淡路大震災の震度7などというのは、当時生まれて初めて耳にする震度階級でした。
ただ、それ以降はどうでしょうか。
超ド級の「東日本大震災」はもちろん、阪神淡路大震災と同程度の震災は日本中で多発しております。
さらに首都直下型地震、東海沖のプレート型地震など、未曾有の厄災の発生が予想されております。
900hPaを上回るような台風、何もかも無にする洪水、熱波・寒波。
自然現象の激甚化は顕著です。
自然現象だけでなく、国際情勢の影響、ウクライナではエネルギーインフラが攻撃対象になっています。
当然温暖化対策もあります。
電力需給を困難にさせる要因が次から次に噴出いたします。

何かできることはないでしょうか。
話を戻します。

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応急復旧。

ガスや水道は全管路の点検・復旧が必要と申し上げました。
かたや電気は、一部の地中線を除き、ほとんどが架空線です。
もちろん短絡・地絡・断線などの点検は必要です。
ただ、ある程度の段階で以前のものをリリースし、新しい配電線に切り替えることは可能です。
倒壊した建物、折れた電柱、兎にも角にも手の届かないところに電線を敷設し、ご家庭まで届けば電気を使用いただくことは可能です。
皆様の生活が少し安定してからゆっくり本復旧すればいいわけです。
こういうやり方を「応急復旧」と言います。
電気が復旧して、しばらくしてから計画停電をお願いしているのも「本格復旧」時のタイミングだと思います。

地震に限らず、災害時の対応は全てこのやり方だと思います。
世の中の災害レベルが、いきなり「本格復旧」を検討できるレベルではなくなるくらい激甚化しているという証左でもあります。

災害復旧にあたっていたのは人間です。

阪神淡路大震災では、電力会社の送配電部門と系列の電気工事会社が当たったであろうというお話をしました。

当時は電力自由化前でしたが、今は違います。
新規ビジネスで「災害復旧専門会社」を立ち上げることが可能です。

当然のことながら専門性が高く、仕事は細分化しており、それぞれに国家資格が必要な仕事も多いと思います。
こんなのに対応できる人材はいるのか。
います。
OBです。

資格は終身ですし、引退したと言っても60代中盤の方が大勢おられます。
高所作業など過酷なことは無理かもしれませんが、若者に現場でアドバイスすることは可能です。
引退はしたものの自分の能力や資格を活かしてみたいという方は案外多いです。
個人個人の境遇や考え方に寄り添うスタンスで説得すると、緩やかなネットワークを構築することは十分可能です。
キーワードは「緩やか」です。
平時に彼らとのコミニュケーションを大切にし、災害時に大手電力を顧客に「シニア災害対応専門チーム」を編成します。
ビジネスモデルとして面白いと思います。

災害時だけではありません。

今、電力をめぐりさまざまな変化が起きています。
「シニア災害対応専門チーム」の活躍の場は「災害」だけではありません。
電力自由化に伴い、さまざまの業態が動いています。

運転代行。

これは実際にあった話で、火力系OBが多く出向している関係会社の社長をしている先輩からお聞きした話です。
ある鉄鋼会社が保有する高炉の排熱を利用して「火力発電」を始めたいとのことです。
設備はありますが、お困りになったのは「運転員」。
OBを派遣して欲しいとのことだったようです。
運転・ボイラー・燃料、専門家・有資格者はおられますが、当時は電力会社の体質も古いまま。
親会社とは揉めたそうですが、お断りしたそうです。
でも今なら。。。

メガソーラー。

メガソーラーの特別高圧設備の電圧は6.6kV。
「電気主任技術者」の常駐が法律で求められています。
これが人材不足です。
「電気主任技術者」を派遣する「電気保安会社」がありますが、なんとここ自体が人材不足です。
その他、一般企業特に生産ラインを持つ企業にも「電気主任技術者」は必要です。
需要は無限です。

他にもいろいろあると思います。
電力会社の専門技術者・有資格者とのネットワークを築き、電力自由化によって開放されたニッチな技術業務を請け負う。
需要は多いと思います。
昔は発想すらなかったですが。

自由化ビジネス
塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。