電力会社社員の転職希望者に。ー経理の専門家が本当の技術屋?ー

経理マン 就職・転職

電力会社転職者事例の第5弾です。

今回は何回か話が脱線します。
電力会社関連のトピックスが報道されましたので、併せてご紹介します。
それゆえ脱線します。
悪しからずご了承を。

現役時代に尊敬していた上司がよく呟いていた言葉があります。
「うちの会社で、本当の技術屋は経理屋だけ」。
意味不明ですよね。
でもその方は工務系の技術で執行役員までなった方なので間違いないでしょう。
真意は前の「電力会社で本当の技術は身につかない」という転職理由が多いという話題の際に書いた記事の裏返しです。
※電力会社から転職なんかできない、するべきではないと思ってました。

引用です。

本当の「技術者」はメーカーや工事会社にしかいません。
少し加えると大学の研究室の一部の人です。
電力会社の「技術者」の技術は、本当の「技術者」の知見を、いかにうまく機能させるかというマネージメント技術だけです。

私は経理にはあまり詳しくありませんが「どういう決算をするか」とか、大きな経営判断まで、合法的・戦略的に考えることができるそうです。
例えば、社会情勢を考えて今年度は黒字幅をこのくらいにしよう。
いや、今年度はむしろ赤字の方がいいのではないか。
というような塩梅です。
高度な経営判断を、法律の範囲内で決めることができる。
当然そのためには深くて専門的な知識が必要です。
会社の方向性なども考える必要もあり、そういう意味で「本当の技術屋」と表現されたのだと思います。

私の知り合いの経理屋にも転職し、全く関係のない会社を2社ほど渡り歩いた人がいます。
処遇は両社とも経理部長です。
収入は同程度かむしろ上がったそうで、特に公認会計士や税理士などの有資格者は、独立も含めて転職を考えたらどうかということでした。

ここから脱線します。

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「地域独占」時代の旧弊と自由化の欠陥。

脱線というものの、テーマと全く違ったものではありません。
現状を経理屋という「本当の技術屋」は、どう判断するのかという興味です。

前の記事で共感した、日経新聞の編集委員がまた新しい記事を配信されました。
いわく、

業界カルテルの摘発、競合事業者の顧客情報の不正閲覧―。
大手電力会社のコンプライアンス(法令順守)感覚の欠如を象徴する出来事が相次いでいる。「地域独占」時代の旧弊を引きずる経営スタイルが一掃されず、所管の経済産業省も株主も業界体質が一向に改善されない現状を甘受してきたことが背景にある。
昨年来続出した新電力会社の破綻や顧客情報の不正閲覧の発覚は、福島原発事故後に政府が加速した自由化の欠陥をあぶり出した。
「電力システム改革」のネジをもう一度巻き直す必要がある。

前にも申し上げましたがこの編集委員の記事は、適切・網羅的・中立・かつ辛辣という点で生意気ですが大変評価しています。
今回も厳しい記事です。
引用だけ読めば、経済産業省の政策批判のように思えますが、全て読むと、やはり電力会社の旧態依然とした企業体質に対する警鐘を鳴らしておられます。

かたや、今年春から10電力会社のうち7電力が、28〜45%の値上げ申請を表明しています。
申請がないのは、原子力再稼働が順調な関西・九州電力と、元々あまり原子力に熱心でなかった(頼っていなかった)中部電力の3社です。
どう思いますか?
そもそも単品で、45%も値上げする商品。
世の中にあります?
このことだけでも非常識です。
本当に自社の経費は乾いた雑巾を更に絞るほどの努力をされているのでしょうか。
従来の電気料金改訂のように、公聴会や経産省の料金制度部会を経て決定されるものと信じますが、成り行きを徹底的にウオッチする必要があります。
人件費削減?当然あります!
就活生には一番気になるところでしょうが、世の中の苦しみ・妬み・嫉みが集中するところです。
圧縮圧力は相当厳しいことを覚悟すべきです!

今回の興味は「本当の技術屋」の判断です。
値上げ申請会社は本当に収支が厳しいのでしょう。
興味があるのは、原子力の再稼働が進んでいる関西・九州の2社の判断です。

現役時代から、原子力が一基停止し、化石燃料で補うと原価損が3億円/日と言われました。
2社はここまで原子力の再稼働が実現すると、来年度の黒字転換するのは間違いありません。
ひょっとすると大幅黒字です。

  1. ほら見ろ。
    原子力が稼働したら、こんなにいい事ずくめ。
    だから原子力しかない。
  2. カルテル破りして、自分だけ黒字?
    史上最高の課徴金払ってんのに黒字?
    実は、課徴金のほとんどが中国電力ですが、世間はそう見ません。
  3. 赤字て言ったらまだ世間から同情を集められるかもしれんが、経産省からは大目玉。
    値下げ圧力も出てきそうで厳しくなるから、イーブンか小黒字に。

こんな感じでしょうか。
いずれにせよ、2社の23年度予想は注目です。
3、なら私の記事の信頼性が増します。
おそらく2022年度、エネルギー価格の高騰により「増収減益」?
電気代が高騰し収入は増えるんですが、お使いいただけるだけ原価損を喰らいます。
って、これは世論への種まき=雰囲気作り。
2023年度、原子力再稼働などの企業努力により「増収わずかな増益」?
ゆえに関西・九州のみ値上げ回避、値下げまでは無理。
というストーリーですか。

脱線はこのくらいで、テーマに戻ります。

どうでしょうか。
企画部門が経営者に判断を諮問し、ある経営判断に沿うように理屈=ストーリーを作り込むのが経理部門です。
超専門職でありながらいち早く経営判断を知り、会社のナビゲーションを任される。
この時は経営陣も、自身の判断の理論構成を理解できているとは思えません。
それが証拠に、決算発表は本発表が儀式で、記者への事前レクの方が長時間に及びます。

転職もありですが、残るのもそれなりです。
この後テーマに戻り、特殊技能である経理屋への超優遇状況をお知らせします。

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エリート経理屋、残るのもまた楽し。

このように電力会社では「経理屋」は特別な存在です。
冒頭に転職者の話をしましたが、前述の通り残るのも一手です。
ただし、前に言いましたヒエラルキー、
①頂上層 東大・京大+地域のトップ国立大学卒
②中間層 その他の国立大学+私立大学
③一般層 工業専門学校+高校卒
のうちの①の人のみです。

優遇されます。

自由化以降、各電力とも数限りないグループ会社を立ち上げました。
ほとんどの会社が連結決算対象です。
経営としての一貫性はみんな意識はしますが、決算まで考えが及びません。
必ず各社に親会社の経理に精通した「監査役」が必要です。
私には何をする人なのかよくわかりませんが重要なポストであるのは間違いなさそうです。
しかも日常、目が回るほど忙しいという感じでもなさそうです。
でも年収1000万超えがゴロゴロです。

その昔、経営者OBを処遇するための相談役・顧問が問題となり廃止されました。
最近ではフェローというポストが話題になりました。
何だなんだかさっぱりですが、役員経験者=フェロー=功労者?
この方々に報いるため高給を払い続けるための制度。
いつの世にもこの業界には庶民感覚はありません。
生活密着商品を扱っているという認識など微塵も感じません。
今回の値上げ圧縮圧力の中でも、監査役ポストの必要性や高給でなければならない。
この理由がうまく説明できればこのままでしょう。

国立大学出身のエリートで、会計学を修めた人は、検討されてはいかがかと思います。
学生さんは、今からでも会計学を勉強されればどうでしょうか。

世の中の雰囲気が今回の値上げ申請をスルーしてしまいそうなので急遽記事にしました。
「経理屋の転職はおすすめ」という記事を書くつもりでしたが、変な流れになってしまいました。
ごめんなさい。
でも、電力ユーザーも日経の編集委員さんのような厳しい目を持ってください。
必ず平身低頭お願いしながら、下を向いてほくそ笑んでいる人間がいます!

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塾長こと一村一矢

「電力会社就活塾塾長」こと一村一矢です。
電力会社のOBで、40年あまり原子力発電所を中心に勤務いたしました。
引退後は小説やコラムを書いています。電力ネタはあまり興味のあるモチーフではありませんでしたが、コロナ禍で企業や店舗がバタバタと倒れる中、電力会社への就職希望者が殺到という噂を耳にしました。 電力会社は今も安定企業なのでしょうか? 就活生のために私の知る限りの実態をお伝えいたします。